デジタルとアナログ・その2 ~ データの寿命

形あるものは滅びるが、言葉は残る、みたいなことを聞いたことがある。一般的に言われていて、何となく真理のような気がしていたが、最近それは逆ではないかと思えてきた。

昨年のこと、娘が、結婚式に使うために子供時代のビデオがないかと言ってきた。もう、30年近く前に、ソニーのハンディカムという当時最先端のビデオカメラで撮影した、娘が小さい頃の映像である。私は、データについては用心深く、磁気テープの映像をDVDにダビングしてあった。当時のビデオカメラは案の定壊れていて動かなかったので、 我ながら先見の明があるな、などと思いながら、そのDVDを娘に渡した。 

ところが、娘からは、もらったDVDをパソコンで再生しようとしたが、何も入ってなくて見られない、と連絡があった。そんなはずはないので、自分のPCで見ようとしたが、やっぱり、DVDの中身は空っぽで見られない。どうしたことかと思っていろいろ調べた結果、データ救済専用ソフトを1万円で購入してやっと見られるようになった。DVDに保存しておけば安心と思っていたのは、全く根拠のないことだった。今回は復旧ソフトで何とか読めたが、通常のDVD-Rだと、10年から30年が寿命だということだ。そもそも普通のDVDは樹脂だし、データの記録は光を当てることによる色素の化学変化で、長期間安定的に保たれるものではないようだ。DVDに書かれたデータの寿命は案外短い。

それに比べて、飛鳥時代や奈良時代の遺跡から出土した「木簡」は、1400年たった今でも、当時の役人の勤務記録や、「今日は体調が悪いから休みます」などの休暇申請、地方から送られてきた特産品の荷札など、当時の情報を読むことができる。DVDの30年と比べると格段に長持ちだ。木簡は木や竹に墨で書かれた記録なので、素材は有機物のはず、なぜこれほど長期間腐らずに残っているのかとAIに聞いてみたら、それは、偶然の幸運で、平城宮などのゴミ捨て場や溝などに捨てられたものが、地下水で満たされていたため、無酸素状態でバクテリアに侵されず、長期保存されたとのことだ。また墨についても、炭素が非常に安定な物質で簡単には分解されないことも要因だと教えてくれた。ちなみに世界的には、メソポタミアの楔文字が穿たれた粘土板など、5000年前の物が当時の様子を今に伝えている。

DVDのデジタルデータは短命で、木簡や粘土板のような形ある物質に書かれた情報は長命。これはデータの話であるが、それはつまりデータを記録する「物質」の話である。データや言葉を長く残そうと思ったら、経年劣化しない安定した物質に記録するのがよい。この話題でいろいろ調べていると、日立製作所が、3億年後にもデータを読める石英ガラスを開発したというYouTube動画 を見かけた。でも、3億年後まで残しておきたいことって何だろう?私の、「今日は体調が悪いから休みます」という休暇申請は、3億年後の人が見てもあまり意味はなさそうだし。そもそも3億年後には人はいない気がするが、ま、何者かが見て、3億年前のホモ・サピエンスという生きものも、今と同じように休暇申請していたのかぁ、と感心してくれるかもね。

2026.1.31
デジタルとアナログ その2
画像:以下のプロンプトで、ChatGPTに描いてもらった木簡のイラスト

「飛鳥から奈良時代の遺跡から出土した木簡は、1400年の時を超えて当時の様子を伝えてくれるが、現在のDVDディスクのようなデジタルデータは、せいぜい数十年たつと読めなくなってしまう、といったネタでブログ記事を書こうと思っているが、適当な木簡の画像がない。ブログのアイキャッチ画像にできるような木簡らしいイラストを描いて。 」
ChatGPTの描いた画像は、本物の写真のようだが、(文字はでたらめのなんちゃって文字と思われるし)間違って本物と思われるといけないので、以下のプロンプトで、漫画風にしてもらった。
「とてもよい画像だが、写真のようで、本物らしく見えすぎるので、この画像のイメージのまま、もう少しアニメや漫画的なイラスト風に変えてほしい。 」
更に念のため、画像の左下に、ChatGPTが出力した画像である旨を明記しておいた。まさか、本物だと思う人はいないと思うが。

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