科学考・その17 ~ カイラル凝縮体と着ぶくれしたクォーク

 以前、ジョン・ケージの無音の曲「4分33秒」は、実は無音ではなく、様々な雑音を聴くのだということをきっかけに、物理的な真空も、実は絶え間なくゆらめいている騒がしい世界だ、みたいなことを書いた。しかし、今回、Geminiと質量の起源について対話して、「真空」について、更に深い知見を得た。物質に質量を与えているのは、実は真空の持つエネルギーであり、騒がしいなどというレベル以上の、もっとずっと複雑で激しいものだったのだ。

 まず、この世の中の「質量」のほぼ大部分は、クォークという素粒子が持っている、というところから始めよう。クォークは3つ集まって、陽子や中性子を作っていて、それがこの世界にある物質(※) の質量のほぼすべてを担っている。しかしながら、クォーク自体の質量は、陽子や中性子の質量の1/3よりはるかに小さく、クォーク3つ分の重さの合計は、陽子の重さの1%にも満たない。では陽子の残りの大部分の重さは何なのか?それが「真空」に由来している。

 真空は、不確定性原理によって、クォークと反クォークのペアーが生まれては消えているような騒がしい世界である。しかも、真空から生まれたクォークと反クォークは「強い力」によって引き付け合って集まる。集まった方がエネルギー的に安定なのだという。この、クォークと反クォークの集まったものを「カイラル凝縮体」といって、この宇宙はこのカイラル凝縮体で満ち溢れている。それで、クォークの質量とこの凝縮体はどう関係あるの?

 今回のポイントはそこ。この、カイラル凝縮体は空間の至る所にあるので、当然、陽子や中性子の占めている空間にもある。陽子や中性子を作っている本物のクォークも、このカイラル凝縮体のクォークや反クォークと出会ってしまう。私たちも空気中なら普通に歩けるけど、プールの中では水の抵抗を感じて歩きずらくなるように、本物のクォークも凝縮体に邪魔されて動きづらくなる。重さとは、動きにくさのことなので、これが、クォークの重さとして観測されるのである。以上が、真空が質量を生んでいることの極単純化した説明である。

 ちなみに、物理学者たちは通称として、カイラル凝縮体がないと仮定した場合の、理論上の素の状態のクォークを「裸のクォーク」と呼び、一方、現実世界の、カイラル凝縮体の中で真空のクォークなどを身にまとって着ぶくれしたクォークを「着衣のクォーク」と呼ぶらしい。クォーク達も身の回りの真空というしがらみにとらわれてたいへんなのだ。

 この世界は、カイラル凝縮体の海。それが、目には見えないけれどこの世の真の姿なのである。ぎっしり詰まったクォークの海の中を、本物のクォーク達が動きづらさをかかえながら頑張ってうごめいている。もう、不思議すぎて言葉にならない。私もあなたも、カイラル凝縮体の海を漂うモノの断片にすぎないとも思うし、同時に、世界を構成するひとつひとつのクォーク達も、なんだかかけがえのない存在にも思えてくる。

(※)この世界にある物質の質量 :ダークマターやダークエネルギーを物質と呼ぶなら、それらを含めると、我々が知っているのは全宇宙の質量の5%にすぎない、という話は今回は置いておく。

2026.2.21
画像:以下のプロンプトでChatGPTに描いてもらったイラスト
「量子力学によると、真空とは「カイラル凝縮体」で満ち溢れていて、物質を構成するクォークは、このカイラル凝縮体の中で抵抗を受けて動きづらくなっている。現実世界のこのクォークを、理論的な素の状態の「裸のクォーク」と対比して「着衣のクォーク」と呼ぶ。これが世界の現実の姿だと思うと、不思議すぎて言葉にできない、と言った内容のブログを書いている。この記事のアイキャッチ画像として、着ぶくれして重くなったクォークのイメージを描いて。イメージとしては、袢纏や布団や分厚いダウンジャケットのようなものを羽織って動きにくそうなクォーク君の姿を、少しコミカルに描いてほしい。物理関係の話題のブログ記事に添えるアイキャッチ画像なので、スマートでいい感じの絵にして。写真のような感じよりも、手書きのイラスト風の感じにして。 」
結構な時間がかかったが、ChatGPTなかなかいいとこ突いてくる。例によって、Powerd by ChatGPTを追加した。

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