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科学考・その11 〜 夜の暗さは地球自身の影=宇宙の暗さ

time 2020/03/22

File written by Adobe Photoshop? 4.0

 先日のこと、会社帰りに最寄り駅の地下道を出ると、西の空に、日没からしばらくしてわずかに紺色の残る暗闇が広がっていた。そのとき、この闇は地球自身の影なんだ、としみじみと感じた。地球が自転することによって、自分の居る場所が太陽系の外側に向いた時、地球自身の影に入り、夜と呼ばれる時間帯が訪れる。小学校で理科の時間に学ぶあたりまえのことを、今、自分が地球上に居る、というリアルな感覚として感じたことが不思議であり、心地よかった。

 その後、この闇は、地球の影というだけでなく、同時に宇宙の暗さそのものだということにも気付いた。影と言うのは、太陽の光があってこその影。太陽から遠く離れれば、そこには漆黒の闇しかない。宇宙には数兆個もの銀河があり、それぞれの銀河には数千億の恒星があるけれど、それでも今の宇宙は十分広いので、光の勢力は闇に圧倒されている。その証拠が夜の暗さなのである。宇宙に光が溢れていたら、この世に夜はない。

 この気付きには伏線があって、しばらく前に、朝、南の空に、青空に昇る半月を見たことがきっかけになっている。朝の月は、夜の月と少し雰囲気が違い、よく見ると、影の部分も闇の黒ではなくて、うっすらと灰色がかって見える。それで、朝の月は、より天体としての月の性格を帯びて見えるようになる。夜の明るい月より目立たないが、夜の月には見えない影の部分も、影として見えるようになるので、空に浮かぶ球体の物質の姿を、夜よりもより感じやすくなると気付いた。月については、以前から時々考えてきたが、更にまた少し、月が愛おしくなった。

 コペルニクス以前の人々は、こんな感覚を持つことはできなかった。なぜなら、太陽系や宇宙の姿を正しく認識してなかったから。現代に生きる私達は、子供の頃に、この宇宙の姿を、ある程度正確に理解することができる。このことは、この、混迷を深める世界にあって、とても大事なことに思われるのだ。この世界をよいものにするためには、まず、この世界を正しく認識する必要がある。この世界を認識する、と言うと哲学の問題のように思われるかもしれないが、哲学より前に科学的認識が先決だと思う。人はどう生きるべきか、とか考えるより前に、まず宇宙の暗さを感じてみるほうが先なのではないか。この世界を認識する基礎は、科学的な認識にある。科学軽視の風潮を感じる昨今、より多くの人が正しい科学的認識に基づいて行動できる世界になって欲しいものだと願う。

2020.3.22(日)
写真:こと座 国立天文台ギャラリーより

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Toshi's Profile

会社員(製造業・雇用延長)。元SE、元大学非常勤講師、元ロルファー。DIYと散歩とメモが趣味。Moleskineを持ち歩いている。愛知県岡崎市在住。
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