2024/04/14

そのスターウォーズには、好きな場面がいくつかあるのだが、エピソード6の実質的な物語の完結シーンで、小熊に似たイォーク族と共和国軍の兵士らが、イォーク族の村で薪を囲んで勝利の宴会をする場面の中に、特に印象に残っているシーンがある。それは、C3PОが、大勢のイォーク族を前に、ルークとハン・ソロ、レイヤ姫や自分たちの、冒険と戦いの物語を、身振りも交えて「語る」という場面である。
このシーンを見たとき、これは、「平家」の世界ではないかと直感した。平家物語は、著名な文学作品の中では、明確な作者が特定されていない作品で、今から900年余り昔に、琵琶法師によって「語られた」物語である。現代のようなTⅤやインターネットのなかった時代に、琵琶を弾きながら美しい声で語られる、英雄たちの華麗な戦(いくさ)の物語が、当時の人々にとって、どれほど大きな、そして心奪われるエンターテインメントであっただろうか、と思う。
C3POの語ったスターウォーズの物語は、その後、はるか彼方の銀河系で、多くの「語りべ」を得て、脈々と語りつがれている、と想像するだけでワクワクしてくるのは私だけではなかろう。ちょうど、平家物語が、何代もの琵琶法師を経て、脈々と語り継がれたように。
しかし、現代には琵琶法師はいない。ただ、紙に書かれた「本」と言う形態で残っているだけである。そこが、かなり残念な気がする。メディアと言う観点では、紙に書かれたテキストは、琵琶という楽器の音色、法師の肉声、語りの場の人いきれのにおいなど、多くの情報が欠落した、痩せた情報になってしまっている。それでも、この物語の世界に魅了されるのだから、やっぱり、平家はいいネ、と思う。
千年経った後、果たしてスターウォーズは、平家のように、人々に親しまれる、真の古典になっているだろうか?フィクション、ノンフィクションの違いはあるが、語り継がれている可能性は、あると思いたい。
2014.2.21(土)
写真:スターウォーズ7オフィシャルサイトより