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多様性大事・その1〜情報の多様性

time 2019/09/14

 先日ラジオニュースで、1日の中でスマホやタブレットなどのメディアを利用する時間を調査した結果、今回が過去最長になったと言っていた。同じアンケーで、調査に回答した人の約8割が、情報が多すぎると思っているとのことだった。このニュースの後、シンクタンク所属の解説者が、確かに情報の量は増えたが、情報の多様性はむしろ減っているのではないかと言っていたことが心に残った。TVでもラジオでもネットでも、取り上げる事件や出来事はほとんど同じ内容だし、ネット世代(とひと括りにしてはいけないような気もするが)は、自分の知りたいと思う情報以外の、関心がないことや自分と反対の意見については、見たくないという傾向が強くなっていて、多様な情報が流通しにくくなっていると言うのだ。

 そういった面があることは確かだと思う。ネットやSNSが情報の多様性をむしろ減らしているという感想は、この解説者だけではなく、多くの人が同じ趣旨のことを言っているのを目にする。でも、本当にそうだろうか?

 インターネットは、もともと Long Tail なメディア。anazonは、一部の売れ筋商品ではなく、数は少なくても非常に多様な商品を揃えることで世の中に支持されている。取扱う商品を売上金額順に並べたリストで、上位の売れ筋商品ではなく、長い尾っぽの部分の売上の合計が、全体の大半を占めているということから Long Tailと言う。ネット社会の基本的な性質の一つは、TV局や新聞社のような特定の機関だけでなく、誰でも情報の発信者になれることにある。情報のありかたをきちんと見てみれば、情報の多様性が減っていると簡単に言ってしまうのは、ちょっと乱暴な気がする。

 情報の多様性が減っていると思うのは、SNSに、一部の、共感をよびやすい意見を増幅する性質があることによる。だから、もう少し正確に言うと、ある出来事や、話題の対象に対する見方の多様性が減っているということで、情報自体の多様性が減っているわけではないととらえたい。とは言っても、情報の見方への多様性が減っているのは良くないことには違いない。

 よく言われることだが、イイネや、リツイートをするときには、指先で反射せず、一度深呼吸して、自分の頭でよく考え、自分のココロでよく感じてからにすることが、ネット社会に生きる我々の大事な心得であり、基本動作である。それが、情報の多様性を守ることになり、社会が危険な方向に向かうのを防ぐことになる。人間にとっては未だに未熟なソーシャルネットワーク技術ではあるが、情報自体の多様性が減っているわけではないと信じたい。今のSNSのしくみは、自分にとっては十分複雑なのであるが、情報の多様性をきちんと増やしつつ、本質的にシンプルで美しいテクノロジーを、誰か発明してくれないものか。

2019.9.14(土)
写真:amazonの画面のロゴ

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Toshi's Profile

会社員(製造業・雇用延長)。元SE、元大学非常勤講師、元ロルファー。DIYと散歩とメモが趣味。Moleskineを持ち歩いている。愛知県岡崎市在住。
toshi@ueba.sakura.ne.jp
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