Deep Breath

DIY, 科学, IT, 環境, LIFE

筋肉考・その1~「QL(キューエル)」

time 2009/09/12

 今回から3回シリーズで、知っているようで知らないインナーマッスルたちを紹介する。普段は目立たないインナーマッスルたちの中から、そこそこ知名度のあるものを取り上げるが、大腰筋のような超有名人はあえてはずして、若干玄人好みの筋肉を挙げた。第1回めの今回は、QL(キューエル)。

「腰方形筋」(ようほうけいきん)英語名”Quadratus lumborum”、頭文字をとって、愛称は、”QL(キューエル)”。ロルフィングでは主に第3セッションでワークする重要な筋肉である。恥ずかしながら、私はロルフインスティテュートで解剖学の勉強をするまで、QLの存在すら知らなかった。第1印象は、名前に惹かれた。「クヮドラタス・ランボーラム」。「ランボーラム」がかっこいい。力強い感じの響きで、ランボーのシルベスタ・スタローンを思い出した。

解剖学的には、骨盤の上部(腸骨陵)と腸腰靭帯(腸骨と腰椎をつなぐ靭帯)から、肋骨の一番下(第12肋骨)を結び、背骨とは、第1から第4腰椎の肋骨突起にも付着している。ほぼ長方形の筋肉で、体を前に曲げたり、横に曲げたりするときに使われる。また、呼吸時にも、横隔膜の動きを助け、肋骨を制御して、胸部の肺空間を作るのにも大切な役割を果たしている。前後から見ると長方形なのだが、輪切りの図を見ると、板状ではなくて、意外と丸みを帯びている。

この筋肉は、身体の「上」と「下」、「縦」と「横」、「前」と「後ろ」そして、「内」と「外」をつなぐ、言わば身体の中での最大の交差点的な役割を担っている。まず、「上下」は、上半身と下半身をつなぐという役割。骨盤上部と肋骨下部に付着しているのだから、そのはたらきは一目瞭然。次に「縦横」は、背中側の垂直方向に走る筋肉群と、お腹の最も内側にあり、腹部を水平方向に包んでいる腹横筋の中間にあり、横曲げの時には、縦から横、およびその逆向きに動きを伝えている。「前後」は、背中側(後ろ側)の筋肉と内臓(前側)の境目にあるという意味。尤も、その更に前面には大腰筋があるのだが。

最後の「内外」については、ロルフィングでは重要な概念で、スリーブとコアを結ぶ役割を担っている。背中の外側の筋肉(固有背筋または脊柱直立筋)と、体幹中心の大腰筋の中間に位置していること、また腸骨稜と腰椎を結ぶという点からも、スリーブからコアへのゲートと位置づけられている。それで、コアセッションの初回である第4セッションへの準備として、スリーブセッションの最終回である第3セッションで、この”QL”をワークするのである。

アイダ・ロルフ博士が、もし人間の体の中で1箇所だけワークするとしたら、12番肋骨に付着する筋肉群をワークすると言ったという話を、ロルフインスティテュートで聞いたことがある。12番肋骨には人体の構造上重要な筋肉が多くくっついているが、中でもQLは目立たぬが重要な存在である。

この筋肉をストレッチするには、体の横曲げや捻りが有効である。また、マッサージテーブルなどの台に横向き、例えば右側を上にして寝て、上側の脚全体を、お尻の側(背中側)からテーブルの下に垂らして行く方法も、力を抜いたまま行えるのでお勧めである。ただし、腰痛持ちの方などは無理な体勢にならないよう十分注意して行っていただきたい。

2009.9.12(土)

down

コメントする




Toshi's Profile

会社員(製造業・雇用延長)。元SE、元大学非常勤講師、元ロルファー。DIYと散歩とメモが趣味。Moleskineを持ち歩いている。愛知県岡崎市在住。
toshi@ueba.sakura.ne.jp
DIY作品集はこちら