2024/04/14

2019年現在、日本では働き方改革がブームのようになっている。残業しないで早く帰りましょう、別に言われなくてもそうしてるし、今まで非効率だったところを改善して効率化することには何の異論もない。でも、何かひっかかるものがある。
多分、多くの人は効率化した結果生じた時間で、効率とは関係ないこと、非効率で役に立たないことをしたいと思っているはずで、私ももちろんそう思っている。でも、働き方改革と言っている側の人たちは、ほんとにそう思っているのだろうかと心配になる。日本の国際競争力の向上というようなことだけを考えているとすると、せっかく手に入れた時間を、有意義に使ってしまいかねない。
テレビなどで、人の役に立ちたいという若い人の意見をよく耳にする。とてもよい志だと思うし、全く否定するものではいが、同時にある危うさも感じる。役に立ちたいという若者は、以前話題に取り上げた本田宗一郎さんや斉と公平太さんや梶田さんのように、役に立たないことの大切さを分かっているのだろうかと気になるのだ。役に立たないことの大切さに目を向けないままひたすら役に立つことだけを目指すと、それは狭くて危険な世の中につながってしまうように思う。全員が同じことを考えている社会は危険で、多様な価値観を持てる社会を目指すべき。そのためには役にたたないことを大事にする必要があると思う。
偉大な和歌の先達、西行さんは、死ぬときは満月の月明かりで夜桜を見ていたいと言った。これは私の想像だが、夜桜の花見と言えば、当然美味しいお酒を飲みながらであろうし、花を愛でる歌を詠みながらでもあろう。月見も花見も和歌もお酒も、世の中には一切役に立たないものばかり。大丈夫、日本にはこういうことに命をささげた人もたくさん居たし、今も多くの人が役にたたないことを信じているはずである。働き方改革が叫ばれる世の中も、それほど悪くはないのかも知れないとも思う。
2019.5.5(日)10連休も終わり間近の日
写真:西行法師 Wikipediaより