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サイエンスとアート・その1 〜 相補的関係

time 2023/07/28

 息子に勧められて、山口周さんの「世界のエリートはなぜ美意識を鍛えるのか?」を読んでみた。今までの経営はサイエンス偏重だったが、これからの時代、サイエンス的な思考だけでは行き詰まる。アート思考を経営に取り入れるべき、という論である。なかなか鋭い指摘で、今でこそ、そんなふうに思っている人も増えているようには思うが、2017年当時には、新たな視点として触発された人も多かったのではないだろうか。

 ただし、ここでのサイエンスという言葉に違和感もあった。経営者の視点を変革するという文脈で、サイエンスとアートを対立軸としてとらえて論じるのは、わかりやすくて良いと思う。その一方で、その文脈で使われる「サイエンス」という言葉は、単にサイエンスという概念の持っている1つの側面を見て使っているに過ぎない。つまり、正確性、合理性、観測データなどの事実に基づく冷徹な思考、という、いわゆる一般的な科学の捉え方である。それは間違ってはいないが、あくまで一面である。

 実際、サイエンスには、今迄常識だと思っていたこの世界に対する認識を、新しい理解で更新するという、アートと非常によく似た創造的な面がある。典型的な例は、アインシュタインの相対性理論である。アインシュタイン以前は、「空間」や「時間」は絶対的なもので、どこから見ても同じだと思っていた。しかし、自然の真実は、系の状態によって、時間の長さや空間内の距離は違って見える。絶対的に不変な時空間の概念よりも、この世界の真の姿は、なんと想像力を掻き立てられ、美しい世界だろうか。現状の認識の殻を破って、新たな視点を得ると言う意味で、科学ほど強力な視点はない。あえて俗っぽく言えば、自然は偉大な芸術家、なのである。

 少し長くなってしまうが、今やこの世の重要な一部となりつつある「生成AI」に、サイエンスとアートが対立概念か?と問うてみた。回答は結構長いので、部分的に引用しつつ、人間である自分が以下にGPTの回答を要約する。

 ”サイエンスとアートは一見対立概念に見えるかもしれないが、必ずしも対立概念ではない。科学と芸術は異なるアプローチでありながら多くの面で重なり合っている。科学者とアーティストの両方が、既存の認識を超えて新しい領域を探求するクリエイティビティを必要とするし、科学的な発見や理論は、しばしば美的な側面を持っている。例えば、数学のエレガンスや物理法則のシンメトリーには、美しさを感じる人も多い。逆に科学的な観察や洞察は芸術作品の中に組み込まれることがある。「科学」と「芸術」は、それぞれ異なる視点や手法を提供しながら、理解、発見、表現の世界を豊かにするために相互補完的な役割を果たすことができる。”

 以上がChatGPT-4の回答(の要約)である。自分はこの回答を見たとき、GPTは本物だと思った。例え言語モデルが、真に「科学」や「芸術」という概念を理解してなくて、それらしい言葉を紡いでいるにすぎないとしても、この回答を読む限り、一般の人より、科学や芸術について深く考えている人が言った言葉だと言って全く差し支えない。さすが、人類の叡智を学んだ機械。

 奥深き、サイエンスとアートの世界。ChatGPTを見習って、単純な対立軸ではなく、世界をより深く理解し、豊かにするために、どちらも楽しもうではないか。

2023.7.28.金 有給休暇の日、自宅で涼みながらAIと戯れている。
科学考・15、AI考・6 兼
写真:Adobe Fireflyという画像生成AIに、「美しく、緑を基調とした植物をモチーフとした、かつカラフルで、幾何学的なシンメトリーなアート作品」というプロンプトを与えて描いてもらった作品。なかなかに、芸術的。

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Toshi's Profile

会社員(製造業・雇用延長)。元SE、元大学非常勤講師、元ロルファー。DIYと散歩とメモが趣味。Moleskineを持ち歩いている。愛知県岡崎市在住。
toshi@ueba.sakura.ne.jp
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