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月と暦・その1~ジャイアントインパクト

time 2017/03/05


 太陽系ができるとき、地球の軌道近辺に、今の地球より小さいサイズの原始惑星が10個ぐらいできて、それらがお互いに衝突、合体を繰り返して今の地球ができたと考えられている。そして月は、その衝突劇が終わる頃、火星ほどの大きさの原始惑星が、地球の元となる比較的大きな原始惑星に、斜めに衝突したためにできたらしい。

 宇宙から見れば、46億年程前に起きた、ほんのささいな衝突だったかもしれないが、地球サイズでは大事件だった。原始地球は大きく壊れて、多くは宇宙空間に飛び散ったが、飛散を免れた部分は合体して、今の地球ほどの大きさになり、また、一部の大きな塊は、今の月となって我々の惑星を周る衛星となった。これをジャイアントインパクト説と言い、現在多くの科学者から支持されている。窓から見える、静かな月の姿からは想像もできないような、激しい誕生の歴史を、今の科学は教えてくれる。

 ジャイアントインパクトは、地球に関するいろんなことを決めたはずだ。地球の公転軌道も影響を受けただろうし、地軸の傾きも、地球の自転周期も、この大きな出来事でほぼ決まったのだろう。すなわち、豊かな四季も、1日が24時間であることも、大衝突の導いた結果に違いない。月の公転面が、地球の公転面に対して約5度傾ていることも同様である。そしてこの5度が、月の満ち欠けで、月が傾いて見えている角度にも影響しているはず。我々が三日月を見るとき、優雅に斜めに欠けているのもまた、原始惑星が斜めに衝突してくれたおかげだろう。もしそうでなければ、平安の歌人も月の名歌を読もうという気にならなかったかもしれない。

 その月が地球の周囲を回る公転周期は、27.3日。ん?と不思議に思った人は、意外と月通。月の満ち欠けの周期は、29.5日なので、公転周期とは2日程度のずれがある。これは、月が地球の周りを1周する27日の間に、地球が太陽の周りを進むためで、地球・太陽間の角度の進みが、月の公転周期上の約2日分に相当する。

 会社帰りに道路とビルの風景の上にぽっかりと浮かぶ月を見るとき、自分が地球という惑星の上にいることを実感することがある。地球は大きすぎて、自分では見ることができないが、太古の衝突で生き別れた我が子の姿を見ることで、自分の姿を想像する。今回、月について書こうと思って調べてみて、最も身近な天体であるにもかかわらず、知らないことが随分多く、我ながら驚いた。そして、我々の生きている、この星の在りようと深いところでつながっている月という存在。この、かぐや姫の故郷になつかしさを感じるのは、日本人だけでなく、地球に生きる物全てに共通する感情なのではないだろうか。

2017.3.5(日)
画像:具満タンから(フリーのイラスト)

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Toshi's Profile

会社員(製造業・雇用延長)。元SE、元大学非常勤講師、元ロルファー。DIYと散歩とメモが趣味。Moleskineを持ち歩いている。愛知県岡崎市在住。
toshi@ueba.sakura.ne.jp
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