2024/04/14

ボイジャーは、1977年にアメリカ航空宇宙局 NASA が打ち上げた惑星探査機で、2023年現在、地球から230億kmの彼方を、時速約6万kmで飛び続けている。1号、2号と2台あって、それぞれ別の方向に飛んでいるが、地球からの距離はだいたい同じぐらい遠いところに居る。2023年現在、地球から最も遠いところを旅する双子の探査機たちである。
彼らが、木星や土星、天王星、海王星などの近くを通って、太陽系の惑星とその衛星たちの驚くべき写真を送ってきたのは、1980年代のことで、もうかれこれ40年ぐらい昔になる。自分は当時まだ高校から大学生の時代で、ボイジャーの送ってきた木星や土星やその衛星たちの美しい写真を見て、おーすげーと感動したことをわずかに覚えている。ボイジャーの撮った写真は、今見てもとても神秘的で美しい。
一体、ボイジャーたちが今居る230億km彼方とは、どんな世界なのだろうか。太陽系の一番外側の惑星は海王星で、太陽と地球の距離の30倍のところを回っているが、その公転半径は45億km、ボイジャーはそれより5倍も遠い。地球から冥王星を見たとしても、単なる暗い星にしか見えないのだから、ボイジャーから地球を見たとしても、小さな暗い星にしか見えないはずである。
実際、ボイジャー1号は、1990年に、長旅で電池が切れてきて、写真を撮影できるラストチャンスの時期を迎え、約60億kmの彼方から、自分の飛んできた方を振り返って、地球を含む太陽系の惑星の仲間たちを1枚づつ撮影した。そのうちの1枚に、我々の住む地球が小さな青い点として写っていて、「ペイル・ブルー・ドット」と呼ばれている。百聞は一見に如かずなので、WikiPediaなどでその小さな青い点を見てほしいのだが、その姿は、カメラのレンズが作り出す青白い光の筋の中に写る、わずかに光る、1ピクセルにも満たない小さな青い点にすぎない。
ボイジャー1号が、13年もの長旅の末に、残りの力を振り絞って送ってくれたこの小さな青い点の写真を見ると、広大な宇宙の中では、地球がいかに小さな存在なのかを否応なく感じることができる。自分にとっては、何か、それがとても心地よい。我々は大いなる自然の、ほんの小さな一部に過ぎない。そんな感覚が自然と湧き上がってくると、世界はもっと住みやすいところになるんじゃないかと思う。
ボイジャーに、この写真を撮って欲しいとNASAの役人に頼み込んだのは、カールセーガン博士だと言うことだが、博士は、このペイル・ブルー・ドットを見て、その著書の中で、こんな一節を書いている。「この画像は、他者をより親切に扱い、我々が知る唯一の故郷である淡く青い点を、保護しいつくしむ責任が我々にあることを、強く訴えているように私には思われる。」
今年は、2023年なので、ボイジャーがペイル・ブルー・ドットを撮影してから33年も経つが、今でもボイジャーたちは旅を続けている。写真は撮れなくなったが、かすかな信号を地球に送り続けていると言うことだ。故郷を離れ、大宇宙を孤独に進み続けるボイジャーたちの姿を想像すると、なぜか応援したくなる。
2023.2.3.金
写真:ボイジャー1号 Wikipediaより
科学考 14兼
ボイジャーについては、日経サイエンス2023年1月号に特集があり、また、2023年1月から始まったNHKカルチャーラジオ「科学と人間・宇宙謎に迫る面白い話」の第2回で、国立天文台の縣さんの話が聞けます。「らじるらじる」でどうぞ。スマホアプリも便利。