Deep Breath

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境界考・その1 〜 境界の豊かさ

time 2025/02/09

 サウナには、当然、サウナ室に入るドアがある。この境目は重要で、もしこれがいいかげんな扉だと、サウナ室内の温度は上がらず、サウナにならない。水風呂との境目には扉はないが、水面が境目だと考えることができる。とは言え、水風呂の手前には、たいていの場合、掛け水をする場所があって、これが水風呂と外を隔てる境目になっている。サウナで出た汗を流し、水に入る準備をする場所。この境目のスペースがないと、水風呂も成立しない。外気浴スペースとの境界はもっとあいまいで、ちゃんとベンチがある所はそれとわかるが、浴槽の淵に座って整っている人も居たりして、外気浴スペースとそれ以外の場所の境界は、ほぼないに等しい。

 サウナだけでも3種類の境界があるぐらいだから、世の中の物事の境界には、そのものの特質と結びついた固有の事情がある。生物の特徴は、境界・代謝・複製の3つだと言われていて、「境界」は生き物にとって重要な特徴である。もし、生物に自己と他者を区別する境界がなければ、外界から養分を取り入れると言っても、どこから?となってしまうし、何を複製してよいかもわからない。境界は、他の2つの特徴を成立せしめている、最重要なものなのである。

 境界をウィルスの視点で見てみると、自身と外界との境界は細胞膜の小さな突起で、それが誰の細胞でも関係ない。私であろうがあなたであろうが、ウィルスにはその区別はつかない。私とあなたを区別する生体の境界は、ウィルスにとってみれば、誰でも関係ない、無差別攻撃の対象なのである。一方、私とあなたにとってみると、ウィルスを受け渡さないための境界は、生体としての皮膚ではなく、薄っぺらいマスク1枚、ということになる。

 こう見てくると、境界とは、個別の事情を抱え持った、複雑で豊かで、一筋縄ではいかないものだと気づく。暇つぶしにいろいろ考えてみるには格好の題材なのは間違いない。今日は、2月9日。先週は、節分に妻の巻いた恵方巻きを食べて、豆まきをした。今年最強寒波が来ていて、まだまだ寒いが、それでも日差しにほんのわずかばかりの春の気配を感じる、冬から春への境界の1日と言えなくはない。しばらく境界で遊んでみようかな。

2025.2.9.日
写真:節分のフリーイラスト

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Toshi's Profile

会社員(製造業・雇用延長)。元SE、元大学非常勤講師、元ロルファー。DIYと散歩とメモが趣味。Moleskineを持ち歩いている。愛知県岡崎市在住。
toshi@ueba.sakura.ne.jp
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