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サイエンスとアート・その2 ~ アート、3つの意味

time 2023/09/08

 アートと言うと、普通は「芸術」と訳されるので、いわゆる絵画や彫刻などを思い浮かべる人が多いだろう。アート作品と言えば、美術館に展示されているような画家の作品のことを指す。ここでのアートの意味は、見る人の心を清らかにしたり、ざわつかせたり、気付きを与えたり、落ち着かせたり、何らかの変化をもたらす作品、とでも定義できようか。音楽でも、楽曲を作ったり演奏したりする人をミュージシャンと呼ぶが、同じような意味で、「アーチスト」とも呼ばれる。アーチストの作り出す作品を「アート」と定義するのもありかもしれない。

 一方、今話題のAIは、カタカナで書くとアーティフィシャル・インテリジェンスで、アーティフィシャルには「人間の作った」という意味がある。最近の画像生成AIは芸術作品も描くようなので、その意味ではAIが生成したアート作品は、人間の作ったものが作ったアート、と言うことになる。ややこしい。アートが「人工の」という意味を持つのは、もともと「アート」が、ラテン語の「アルス」に由来し、これは「自然」に対して「人間のつくったもの」をあらわす言葉だったことに依る。自然と人間は本来対立するものではないはずなのに、人間の作ったものは自然物ではなく、アートなものという感覚が、この言葉には含まれている気がする。アート、2つめの意味は「人工の」。

 3つめは、「リベラル・アーツ」のアートである。リベラル・アーツは、大学の教養課程や一般教養科目のことを指し、人文、社会、自然科学などの幅広い学問領域を広く学ぶことを言う。もともと、古代ギリシャで生まれた概念で、リベラル=自由人にふさわしい学問の基礎という意味がある。古代ギリシャは直接民主主義を生んだ自由市民の国、ポリスの集合体で、「自由人」の教養レベルもさぞ高かったことだろうと思う。でも、ものの本によると、ギリシャの民主主義は奴隷制度の上に成り立っていたので、ほんとに民主主義だったのかはおおいに疑問があるが。それにしても、古代ギリシャ人が定義した、人が身に付けるべき教養としての「アーツ」は、現代社会にもおおいに影響を与えている。

 既成概念を超える自由を目指すアート、人間の能力を超える自由を求めるアーティフィシャル、自由人にふさわしい教養、リベラル・アーツ。アートには「自由」の概念が深く結びついているように思う。そして、サイエンスも、人間の認識能力を超えてゆく自由を求めている。まだまだ暑いけど、もうすぐ芸術の秋。アートの力で、暑さからも自由になれないものか。

2023.9.8.金 コロナのダメージから戻りきってない感じの有給休暇
自由考・その4兼
写真:ソクラテス、Wikipediaより

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Toshi's Profile

会社員(製造業・雇用延長)。元SE、元大学非常勤講師、元ロルファー。DIYと散歩とメモが趣味。Moleskineを持ち歩いている。愛知県岡崎市在住。
toshi@ueba.sakura.ne.jp
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