2024/04/14

NHKカルチャーラジオで、佐倉統さんの「科学技術と上手に付き合うために」という話を聞いた。その中で話題になっていた、「共視」について取り上げる。共視とは、二人以上の人がともに一つの対象に目を向けることを言う。佐倉さんのラジオ講座では、ロボットと人間の関係を共視の視点から考察していて、とても面白かった。欧米ではロボットと人間でググると、ロボットと人間が向き合っている画像がほとんどだが、日本では、ロボットと人間が同じ方向を共視している画像が多いことを挙げ、ロボットに対する見方の違いを文化的な視点から論じていた。象徴的に、フランケンシュタイン型とアトム型とも呼んでいた。東洋と西洋の文化の違いが、こんなところにも鮮明に表れていることに、なるほどと納得した。
スポーツをプレーヤーの視点で考えると、およそ3種類に分類できる。一つは、全てのプレーヤーが1つの球を見ている球技。2つ目は、プレーヤーが互いを見て戦う格闘技。3つ目は全員別々のものを見ている、陸上や水泳などの競技の3つである。弓道などはどこに入るのかと思う人もいるかもしれないが、プレーヤーの視点という観点では、形は同じだが、選手毎に別々の的を見ているので、個人競技として3番目に分類しておく。スポーツをこんなふうに分類したことはなかったので、ちょっと新たな視点を得た気がした。
ただし、上の分類は、プレーヤーとしての視点の話である。上記の3種類のいずれも、観戦者の視点からは同じで、野球でも空手でも100m走でも、観戦者はその競技を共視するという点では全く同じである。観戦者の視点からはスポーツを分類することはできない。同じ対象を共視する人は仲間なので、サッカーのサポーターなどには強い連帯感が生まれる。
eスポーツは最近話題で、オリンピックの種目になるかが議論されていると言うことだ。視点の観点でスポーツを分類してみると、eスポーツは、上記のどれにもあてはまらない、第4の分類があることに気が付いた。上記の、第1と第3の分類は、リアルスポーツでもeスポーツでも同じだが、第2の分類では、eスポーツの格闘技の選手の視線は、互いを見るのではなく、同じ画面を共視しながらアバター同士が闘う。実際にeスポーツの格闘技を見たことはないが、昔からあるゲームセンターの格闘ゲームと同じものを想定すると、対戦相手と同じ画面を共視しながら闘う競技のはずである。これは、リアルスポーツにはない形態で、第4の分類になる。
更に、eスポーツでは、観客にもプレーヤーの視点での観戦ができるなどの新たな観戦体験を可能にする。最近でこそ、モータースポーツのドライバー目線の映像とか、プロ野球の審判カメラとか、プレーヤー目線に近い映像で観戦できるようになってきているが、eスポーツでは最初からそれが可能なのである。そのこともまた、eスポーツ人気の大きな要因だと思う。
今のところ、私のスポーツ観戦はリアルスポーツに限られていて、eスポーツを観戦したことはない。食わず嫌いなのかもしれないが、デジタル好きを自認する自分でも、リアルな身体の動きを伴わないスポーツ観戦の楽しみが今のところ分からない。そこがデジタルネイティブ世代との感覚の違いなのかもしれない、などと思ったりする。
2021.12.31(金)
写真:弓道のフリーイラスト