2024/04/14

三重県津市に、「三巧」という有限会社がある。地元のスーパーなどで出る生ごみや食品残さを良質の堆肥にリサイクルしている会社である。その堆肥を使って地域で野菜を作り、地元の人に届ける。地域で循環するリサイクル・ループ。世の中、それほど単純ではないだろうが、地域全体がこの輪に入れば、こんな良い影響が思い浮かぶ。地域の生ごみが減り、野菜は甘くておいしくなり、農家の収入は増え、遠くで作られたものを買う必要がなくなり、輸送にエネルギーを使わなくてもよくなり、近くで安全に作られた作物を食べられるという安心も手に入る。環境意識の高い企業なら、こんな地域で活動してみたいと思うかもしれない。
このようなリサイクル・ループは、今や数多く稼動している。早くから取り組まれ、有名になったものとして、山形県長井市の「レインボー・プラン」がある。これも、地域の生ごみを堆肥化して農家の野菜作りに生かしている。また、滋賀県東近江市の愛東地区では、菜の花を利用した資源循環型の地域作り「菜の花エコプロジェクト」を運営している。菜種油を搾った油かすから堆肥にリサイクルしたり、菜種油を料理に使った後の廃油を回収して、バイオディーゼルとして、自動車、船舶、農耕器具の燃料としてリサイクルするもので、地域の特産品を生かしたグッド・ループである。
多分、まだまだ日本全国、あるいは世界には多くの地域循環の取り組みがある。たまたまここで取り上げたのは、私のアンテナにかかったものの一部だが、地域循環システムで検索すると、事例が山ほど出てくる時代になった。人間は、進歩するのだ。
そして、こういった循環を支えるのは、やはり「自然」。きれいな空気や安全な水がなければ、このようなループもきちんと輪を作れないだろう。そういう意味で、森林、里山、湿地などの環境保全は、持続可能社会を、より底辺で支える重要な役者である。それらを守る取り組みも少しだけ紹介しておこう。
自宅から車で10分程度のところに、岡崎市が里山再生の取り組みをしている「おおだの森」がある。ここでは戦後、林業が衰退したため、手入れが行われていなかったが、今では地元のボランテイァらが桜やモミジを植えて里山の再生を目指している。地元の高校生らも参加して里山の保全活動をしているという、心あたたまる新聞記事を見かけた。
もちろん、里山保全活動も、全国的に数多くの取り組みがなされており、その全てを応援したい。多くの人が言っているように、里山はこれからの循環社会の重要な知恵を数多く含んだ知恵の宝庫であり、考え方と生き方の指標でもある。私自身も、職場こそ名古屋の街中にあるが、自宅近辺にはまだ里山の風景がいくらか残っている土地に暮らしており、里山の自然とともに生きたいと願っている者である。
2010.3.24(水)