2024/04/14

お腹の筋肉は、外から外腹斜筋、内腹斜筋、腹直筋、腹横筋と、4つの筋肉が内臓を支え、姿勢を保っている。言わば人間は、4層構造の腹巻を巻いている。一般に、ボディビルダーのお腹が割れているのは、正面の腹直筋の、筋肉と腱画の構造が見えているのである。
腹横筋の中央部の腱膜には、お臍の数センチ下で、弓状線と言う切れ目があり、ここで、外側にあった腹直筋が腹横筋の内側に潜り込み、腹横筋と腹直筋の内外の位置が逆転している。2つの筋肉が表層と深層に配置している場合、途中で内外が逆転するような構造を取るものはないが、この、弓状線での腹横筋と腹直筋のクロスは、筋肉配置の中でも例外的な構造をしている。なぜこんな複雑で分かりにくい作りになっているのだろうか?
解剖学の教科書によると、体の下方ほど内臓の圧力が強まるので、それに対応して強度のある腹直筋が内側に潜り込んで内臓を支えるのに必要な強度を確保しているらしい。確かに、胃のあたりでは、上に乗っているものは、心臓はあるものの、その他は、空気を扱う肺で、これは軽いので、横構造が内、縦構造が外でも安定していそうである。それに、体を前屈させる時には、横内・縦外の方が都合がよさそうである。
逆に、下腹部には、内臓の重さがすべてかかるので、縦構造を内側に持ってきて上に引っ張り上げるようにし、外からは骨盤を支えにして帯を締めるように支えた方が安定度が増すように思われる。和服を着るときには、帯は骨盤を通って下腹部を支えるように巻くのが正しい着用法である。これは、内臓の重さを支える腹横筋と同じ構造で体全体を支える知恵なのであろう。普通にスラックスやズボンを履くときでも、腸骨陵を通らず、それより上部にベルトをするような、股下の長いタイプのズボンは、なんとなく落ち着かない。やはり、少し股下の短いもので、骨盤でしっかりベルトをはめられるものの方がしっかりするように感じる。
関連して、今の若者の、腰パンについて、半分お尻の見えているようなのは、いかがなものかと思う。はやりのファッションがお話にならないほどだらしなく見えると言うことは、私もオジサンの仲間入りかとも思うが、それでも、あの腰パンだけは容認できないものがある。腰パンの若者たち、もうちょっとまともな格好はできないものだろうか。
腹横筋のストレッチは、体側伸ばしや、体側の捩りが一般的だが、ここでは、ストレッチではないが、腹横筋を使った腹筋を紹介する。ロルフムーヴメントで使うエクササイズだが、10シリーズの第5セッションに組み入れてしまうこともある。見た目は、テーブル上で仰向けの姿勢から上体を起こす普通の腹筋の動作なのだが、使う筋肉を変えることで、全く質の違う動作になる。コツは、なるべく腹直筋を緩めたまま、お腹の横、あるいは背中側を引き締めて、ゆっくりと上体を起こすことである。プラスチックのバーを手に持って補助すると感覚をつかみやすいので、通常はバーを使う。手で握ったバーが軽くなって、ひとりでに斜め上方に上がってゆくような感じをイメージして起き上がると、腹直筋を使う比率が減ってくる。なかなか、感じることの難しい感覚の1つではあるが、今までの体の使い方と全く違う感覚を得られるので、新しい体の可能性を見つけ出すヒントになるエクササイズである。ぜひ試してみてほしい。
2009.9.21(月)
画像:http://www.balancevictoria.com/articles/transverse.cfm より