Deep Breath

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瞑想考・その3 ~ フランスの禅

time 2011/10/17

 NHKのBS放送で、五木寛之さんが出ている、「21世紀仏教への旅」という番組を見た。たまたま、数年前に放送した番組を再放送していたのだった。五木寛之さんは、独特の語り口で、ダンディで、男の私から見ても、とても魅力があり、ファンである。

その番組の中で、フランスの座禅事情を紹介していた。フランスでは、座禅が一過性のブームではなく、フランスの文化のひとつとして定着しているらしい。番組では、カトリックの教会の一室、聖母マリアと幼子イエスの肖像画が飾られている部屋で、10人ほどの人が座禅をしてる風景をVTRで流していた。しかもそのような教会は、フランス全土に広がっているとのことである。私にとっては、初めて見る風景であり、新鮮に映った。やはり、フランスは、文化的に成熟して、レベルの高い国だと改めて感じた。

フランス人は、EUの中でも、自国の文化に対するこだわりの特に強い国民だという先入観があったが、禅のような異文化であっても、また、禅のように難解なものであっても、質の高いものを取り入れる柔軟性も持っているのだと、そのVTRを見て再認識した。そういえば、フランスという国は、柔道を習っている人の人口も日本を凌ぐほどだと聞いたこともある。フランス人のメンタリティは、実は日本人と共通する面が多くあるのだと思う。そういえば、私もフランス人の知人が1人だけ居るが、彼は、日本のアニメにかなり詳しい、オタク一歩手前の若者であった。アニメ・柔道・座禅、やはり、フランスと日本は文化的に親戚関係にあることを示す状況証拠としては、十分だと思う。

また、その番組では、”ZEN”という言葉が、フランスで日常用語として使われているというレポートもしていた。パリの女子高生が、ZENという言葉をどんな時に使うかと問われて、「友達がストレスやプレッシャーを感じている時に、ZENで行かなきゃ、と言ってあげる」のだと言うインタビューが印象的だった。落ち着いて、とか、自分を見失わないで、と言うような意味で使うらしい。物静かな子ではなく、どう見てもキャピキャピ系のギャルが、ZENで行こうよ、と言うのである。どれだけ一般に浸透している言葉かが分かろうと言うものだ。

ZENという言葉について、他の人にもインタビューしていたが、多くの人が、冷静になるとか、クールダウンするとか、熟慮する、というような意味で使っているとのことだ。中には、ZENって言うとカッコイイじゃん、と言う人もいた。それを見て、英語の”cool”の使われ方にとても近いと思った。フランスでは、ZENは、coolなのだ。

日本人の私でも、瞑想を三日坊主で挫折してしまったのに、遠く離れたフランスの地で、日々、心を鎮めて座っている人たちが居ると思うと、なんとなくほのぼのとする。その禅も、元を正すと、道元や栄西が中国から学んで来たもの。中国に起源を持つが、日本で独自の精神文化に昇華した。フランスでも、日本とは別の、フランスの禅が花開くであろうと言ったのは、昭和初期にフランスに渡り、禅の普及に取り組んだ、弟子丸泰仙さんだったと、上記の番組で紹介していた。弟子丸さんのような日本人が、今のフランスの人々のココロに影響を与えていると思うと、世の中の奥深さ、厚みを感じて嬉しくなる。
2011.10.17(月)

写真:Wikipediaより、「エッフェル塔」

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Toshi's Profile

会社員(製造業・雇用延長)。元SE、元大学非常勤講師、元ロルファー。DIYと散歩とメモが趣味。Moleskineを持ち歩いている。愛知県岡崎市在住。
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