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道具考・その4~単なる道具以上の何か

time 2017/05/03

 道具には、単なる道具以上の何かがあると思う。機能美と言ってしまうと簡単だが、その一言では全く表現できない奥深さがあるように思う。

 例えば包丁。包丁は食材を切る道具であるが、包丁自体の持つ曲線や、刃物の質感、切り心地などに、単に切断する道具という範囲を超えた美しさがあるように思う。以前テレビ番組で、日本の包丁が海外からの観光客に人気だと言っているのを見たことがある。人気の理由は、よく切れるからという答えが一番だということだったが、刃や取っ手の形状が美しいからだと言う外国人もいた。その時は、刀の時代からの伝統が違うから当然さ、などと自国の文化に優越感を感じたりしていた。確かに文化という面もあるけれど、道具の持つ美しさ、ということがより本質にあるように思う。刀は物騒な道具であるが、骨董屋では高額で売買されるような、人気の美術品である。もしかしたら包丁も、自宅に飾って鑑賞しているような包丁マニアもいるのではないかと想像する。(私は違います、念のため)

 以前、道具考でも触れた話題だが、イチロー選手のグローブやバットは美しいと思う。それは、あの伝説のレーザービームの映像と結びついているから余計に魅力的に映る面はあるが、何もイチローのグローブだけが美しわけではない。野球好きな人にとっては、スポーツ用品店に並んでいるグローブを見るだけでもワクワクする。その色合いや、土手の縫い目や丸みを帯びた形、革の香りに心惹かれるものがあるはずである。単にボールを受けるだけの道具とは違う、野球というスポーツの楽しさが、その道具に込められているがゆえの魅力、そういうものだと思う。包丁の例では、調理することの楽しさ、食べるということの楽しさが込められた調理道具の魅力。

 それ以外にも、道具だが、それ自身が道具以上の魅力を持つものは、たくさんある。私の好きなモレスキンという小さなノートにも、単にメモする道具という存在以上の魅力がある。メモ好きは、それぞれ自分の嗜好があって、ほぼ日が好きな人も、トラベラーズノートが好きな人もいて楽しい。ちなみに私は、ほぼ日もトラベラーズも持ったことがないけれど、どちらもいいところがあって、魅力を感じる。今回の話題からは余談だが、違いを認めていいなと思える心を持つ、ということが大切で、自分が信じること以外は、話も聞かないし、壁を作って排除する、という最近の風潮には賛同できない。

 イチローのバットは、バット職人が手作りしていると聞いた。刃物を作るのは鍛冶職人。職人の手で生み出された道具は、単なる道具を超えた魅力を備え、その道具を使う人の技をも高める。機械で大量生産された道具がダメとは言ってない。その機械は、多分、元々は職人の手によって作らたはず。人が道具を使うとき、その道具で作ったモノが使われるフィールド(料理が出される食卓やレストラン)を想像することで、その道具に魅力を感じるのと同じように、その道具を作った人(職人)の技に思いをはせることもまた、その道具を益々魅力的にする。

2017.4.23(日)
写真:グローブの土手部分(ミズノのWebサイトから)

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Toshi's Profile

会社員(製造業・雇用延長)。元SE、元大学非常勤講師、元ロルファー。DIYと散歩とメモが趣味。Moleskineを持ち歩いている。愛知県岡崎市在住。
toshi@ueba.sakura.ne.jp
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