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DIYのココロ・その2~DIYとアート

time 2010/01/22

 アーチストとは、芸術分野に特化したDIYerである、と言ったら、日曜大工とアートを一緒にするな、と芸術家に叱られるかもしれない。しかし、アートとDIYの境界は、それほど明確ではない、と言うのが今回の話である。

アーチストは、たいてい、その作品を自分で作る。よほど特殊なアートでは、設計者と製作者が異なるケースもあるかもしれないが、画家は作品を自分の手に絵筆を持って描くものだし、彫刻家は自分で造形を作り出すので彫刻家なのである。その人が作り出したものなので、アーチストと呼ばれ、芸術作品と呼ばれる。芸術活動とは、自ら作る、と言う意味では、広義のDIY活動に含めることができる。

逆は正しくない。例えば、私がDIYで作った「アイロン台」がアート作品でないことは言うまでもない。そもそも、DIYは、生活に役立つモノを手づくりする、と言う基本的な精神があるが、アート作品は、日々の生活に役立つ道具でない。道具ではない?いや、そうでもない。道具がアート作品であるものは案外多いことに気付く。典型的な例は、茶道で使う茶道具。一般に食器には、実用的な面と芸術的な面が同居している。単にお茶を飲むための茶碗なのだが、見る人が見れば、至高の価値を持つ芸術品なのである。陶芸家は、芸術家であり、量産品の湯飲み茶碗を作っている工場の技術者とは明らかに異なる作業をしているのだが、製作過程も、出来上がるものの大雑把な形状も、ほとんど同じなのである。DIYとアートの境界があいまいだと言う意味をイメージいただけただろうか。

類似の例はいくらもある。例えば、竹細工。竹細工で作られた花器や器は、実用性に優れているばかりでなく、芸術品としても一級である。竹細工を作る職人サンは、私から見れば、究極のDIYのプロである。例えば、ファッション。流行の衣服のデザインをするデザイナーは、自ら裁断をし、布を縫い合わせて斬新な衣服をDIYする。ファッションデザイナーの事務所に、製作スタッフが多数いたとしても、デザイナーは確かにDIYerなのである。その他にも挙げればいくらでもある。世に、職人と言われている人たちは、すべからく、その道のDIYの達人だと思う。そして、職人の作り出す作品は、芸術的な価値を持つものが多い。DIYと芸術は、とても親しい関係にある。

法隆寺の西岡棟梁の話を本で読んだことがある。伽藍を作る宮大工は、大工なので、まさにDIYerの親玉みたいな人たちだが、彼らの作り出す寺社は、法隆寺の美しい五重の塔を持ち出すまでもなく、紛れもなく芸術品である。何も寺社に限らず、優れた建築は、芸術作品と言われることが多い。その建築を設計した人も、自分で大工道具は持たなかったかも知れないが、私の定義では、やはりDIYerなのである。

自分のことを振り返っても、時々、書道で字を書きたくなるし、絵も描きたくなる。ちなみに私は、毎年年始に書初めをするが、今年は、「聴」と「観」と言う2文字をしたためた。私にとっては、木工で本棚を作るのも、習字の筆を持って文字を書くのも、共に、近しい関係にある、DIY活動なのである。

逆に、ハイレベルなDIYerと言うと、こんな人を想像するかもしれない。古くなった水道の蛇口を取り替えた後に、庭木の植え替えをして、家の屋根瓦の割れたところを専用のコーティング剤で補修したと思ったら、自分用のくつろぎチェアーを自ら作り、はたまた家にあった端材を縫い合わせて、自分にあった抱き枕を作ってしまい、それをかかえてスヤスヤ眠っている人。そんな人に、私はなりたい。
2010.1.22(金)
写真:自宅玄関の生け花(生け花は自作DIY!、竹籠は残念ながら、どなたかのDIY)

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Toshi's Profile

会社員(製造業・雇用延長)。元SE、元大学非常勤講師、元ロルファー。DIYと散歩とメモが趣味。Moleskineを持ち歩いている。愛知県岡崎市在住。
toshi@ueba.sakura.ne.jp
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