Deep Breath

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記憶考・その4 〜 筋肉の記憶

time 2021/05/08

CREATOR: gd-jpeg v1.0 (using IJG JPEG v62), quality = 85

 昨年、左の肩が五十肩になり、痛みで腕が上がらず、およそ1年ぐらいの間、趣味の太極拳をすることができなかった。それが、今年に入って少し痛みがとれて動くようになってきて、久しぶりにやってみた。長いことやってなかったので、最初は、忘れてしまっているのではないかと不安だったが、無心になってやってみると意外と覚えていて、おぼろげながらも少し動けて、我ながらちょっと感動した。昔何度もやって覚えた動きを、体が覚えていてくれた。年々衰えてゆく自分の身体に、ちょっとした希望を感じた。

 身体が覚えていたと思ったのも、厳密には、脳内のどこかに身体を動かす機能を司る部分があって、その特定の動きが記憶されており、それを身体に再現させたわけで、手や足の筋肉そのものが何らかの情報を記憶していたわけではない。とは思うが、身体感覚からすると、手足の筋肉が記憶していたように感じて、とても不思議である。でも、脳も身体も複雑極まりない人間、と言うか生物のこと、それぐらいの不思議は当然のことようにも思う。

 AIやロボットの研究で、意識や知性の成り立ちに、身体感覚が深く関与していることを研究する分野があると聞く。自分の経験した「身体が覚えている」感覚は、脳内の記憶と身体の関係を通して意識を研究する手がかりになりそうな気がする。

 前段で、身体の動きの記憶も、身体自身が覚えていたわけではなく、脳の記憶機能に依ると書いたが、せっかく身体感覚として記憶していることを、単に脳内の神経細胞の働きだけに帰着するには、何かもったいないことのように思う。確かに筋肉という単なるタンパク質には情報を記憶する機能はないが、筋肉は、脳と情報をやりとりする神経回路を含めて筋肉なのである。脳と筋肉のように分けて考えるのがそもそも間違っていて、神経回路を含む筋骨格系を分けずに1体のものと理解して、その系が記憶していたのだと思うと、腑に落ちて、身体の中から納得できる気がする。

2021.5.8(土)10連休の9日目.
写真:筋肉のしくみ(フリー素材となっていたもの)

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Toshi's Profile

会社員(製造業・雇用延長)。元SE、元大学非常勤講師、元ロルファー。DIYと散歩とメモが趣味。Moleskineを持ち歩いている。愛知県岡崎市在住。
toshi@ueba.sakura.ne.jp
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