Deep Breath

DIY, 科学, IT, 環境, LIFE

スターウォーズと歴史・その2~スターウォーズと壬申の乱

time 2018/11/04

 奈良・明日香村を自転車で散策したのがきっかけで、歴史好きになり、BSの歴史番組を見るようになった。中でもNHK BSの「英雄たちの選択」という番組は、磯田道史さんの鋭いコメントが好きで楽しませてもらっている。その番組で先日、「壬申の乱」がテーマの回があった。

壬申の乱は、672年、天智天皇の後継争いで、息子の大友の皇子と、天智の弟の大海の皇子(後の天武天皇)が戦い、大海が勝利したものである。日本書紀には、大友が兵を集めて挙兵の準備をしたために、大海が正当防衛のために出兵したと書かれているが、番組では、この記述自体が後に創作されたもので、実は大海は用意周到に準備して大友を討ったのだという説を紹介していて、今ではこれが定説になっているとのことだった。

ただし、壬申の乱は単なる後継者争いではなく、当時の中国や朝鮮半島などの国際情勢や、各地の豪族の動きなどの国内情勢が深く関わっていて、事はそれほど単純ではない。当時の日本(倭国)は、乱に先立つ663年に、白村江の戦いで、唐・新羅(しらぎ)連合軍に大敗して以来、唐や新羅から攻め込まれるリスクを抱えていた。その後、新羅が朝鮮半島の覇権をかけて唐に反旗を翻したため、唐は倭国を味方にすべく、軍事物資や兵役を要求。大友がそれに応じようとしたため、唐への従属に反対する大海は、それを阻止するため大友を倒す動きに出たとも言われている。

この時大友は、唐と協力して新羅を攻める目的で、国内各地に徴兵を要請するため使者を送った。しかし、この使者たちは全て大海と通じており、大友が集めたと思っていた兵は、実は、大海が挙兵したときに大海軍に合流して大友を撃つことになったと言うのだ。自分が集めたと思っていた兵に攻撃された大友の悲劇よりも、むしろ、大海の、目的のためなら裏で糸を引きまくる黒幕ぶりに、感心もし、恐ろしくもなった。

この話を聞いたとき、何か以前、これと似た話を見た記憶が蘇ってきた。スターウォーズのエピソードⅡで、オビワンは惑星カミーノにたどり着き、共和国のために製造されたと言う20万体のクローン兵を目にする。その兵は、分離主義者を主導するシスの暗黒卿が、ジェダイを偽って発注したもので、その後、エピソードⅢで、分離主義者との戦闘が山場を迎えたとき、暗黒卿が出した命令「オーダー66」によって、クローン兵が突如寝返って、共和国軍とジェダイを討つことになる。ジェダイは、味方だと思っていたクローン兵によって突然、理由もわからずに攻撃され壊滅状態に陥る。自分が集めたと思っていた兵に討たれることになる大友がジェダイに、内通や裏切りを操った大海がダース・シディアスのイメージと重なって見えた。

もちろん、大海は、国内・国際情勢から、自分が権力を掌握して難局を乗り切るつもりでやったことで、事実その後、大海の巧妙な外交政策もあり、倭国は唐からも新羅からも攻められることはなく、また都を飛鳥に戻したりして、国内情勢も安定するので、陰謀や黒幕と言うと語弊があるとは思う。でも、片方は歴史、片方は物語と違いはあるが、その筋書きはとてもよく似ている。ジョージ・ルーカスは日本文化にも造詣が深かったと言うから、もしかしたら壬申の乱の話を下敷きにした可能性もないとは言えない気もするし、世界史に詳しい人に聞けば、オーダー66の元になるような歴史上の戦いは、壬申の乱以外にもいくつかあるのかも知れない。

歴史番組には続きがあって、壬申の乱を起こしたのは実は大海ではなくて、大海の妻、後の持統天皇が全て仕組んだことだったと言う説もあるとのことだ。だとしたら、スターウォーズのアナロジーでは、暗黒卿は実は持統だったと言うことになる。さすがにルーカスもダース・シディアスの妻が裏で糸を引いていたと言うダークな話までは、思いついたとしても、やりすぎだと思っただろうな。

写真:天武天皇

down

コメントする




Toshi's Profile

会社員(製造業・雇用延長)。元SE、元大学非常勤講師、元ロルファー。DIYと散歩とメモが趣味。Moleskineを持ち歩いている。愛知県岡崎市在住。
toshi@ueba.sakura.ne.jp
DIY作品集はこちら