Deep Breath

DIY, 科学, IT, 環境, LIFE

プロプリオセプション考・その3 ~ アバターの身体感覚

time 2022/02/13

 最近、facebookがMetaに社名を変更して、メタバースに取り組むというニュースを聞いた。テレビのニュースでは、メタバースの中にある会社に、社員のアバター達が出勤して、バーチャルな会議室で思い思いの恰好をしてミーティングをしている様子を映していた。コロナでテレワークがこれほど一般的になる以前は、バーチャルオフィスなどは何だか不自然で、あまり出勤したくないと思っていたが、これだけ在宅勤務が一般的になると、アバター出勤も、まぁありかなと思えるようになってきた。

 アバターは自分の分身としてメタバース内に居るデジタルな奴なのだが、アバターの身体は、今のところポリゴンで、身体感覚からのフィードバックはほぼない。生身の身体とバーチャル世界をつなぐのは、主にヘッドマウントディスプレイと呼ばれるゴーグルで、視覚からの情報に頼っているが、それでも優秀な仮想空間なら相当な没入感があるようだ。コンピューターによって作られた仮想の崖の上に立つと、本当に恐怖感を感じるらしい。ちなみに私は高所恐怖症なので、バーチャルであっても、決してそんなことろには近づきなくない。

 プロプリオセプション(※)について考えていると、アバターの身体感覚に思い至った。アバターに没入していった世界で、バーチャルな身体が自分の身体のように感じられるとき、プロプリオセプションを感じることはあるのだろうか?デジタルな身体の感覚、没入感が増してゆくと当然行き着く問題だろう。メタバースのサッカースタジアムで、アバターのサッカーチームを応援するサポーター達は、スタジアムの人いきれや、騒然とした雰囲気、あるいはゴールの瞬間にスタジアムが一体化したような、体の底から湧き上がるような感動を味わうことがあるのだろうか?

 よくWeb会議の問題点として、ニュアンスや場の空気感みたいなものが伝わらないと言われることがある。私などは、ほんとにその場に居合わせたような、変にリアルな感覚がないのも、逆にメリットのような気がするのだが。以前オンライン考でも書いたが、オンライン技術は今ぐらいのバーチャルさ加減がよいと思っている。なので、アバターが身体感覚など持つのにはなんだかちょっと抵抗がある。

 映画マトリックスでは、首の後ろに電極があって、ネットと脳神経を直接接続していたシーンがあったような気がする。そんな世界が実現して、巨大なインターネットの空間を脳で直接感じることができるとしたら、どんな感覚が得られるのだろうか。自分は絶対に体験したくはないが、誰か勇気ある人がやってくれるなら、怖いもの見たさで感想を聞いてみたい。

(※)プレプリオセプション:2回前の回(その1)を参照(http://ueba.sakura.ne.jp/?p=682

2022.2.13(日)
写真:Meta社、Horizon Workrooms概要ページの画像
https://about.fb.com/ja/news/2021/08/horizon-workrooms/

コメント

  • […] オンラインについての記事では、オンライン技術がオフラインをめざして、その間を埋めてきことと、自分にとってはリアルな対面より、現在のオンラインミーティング程度のバーチャルさ加減が心地よいと書いていたり、類似の話題で、メタバースでのアバターという身体的なものと、リアルな身体感覚の間に思いをはせたり、バーチャル世界の通貨とリアル世界の通貨の互換性から、通貨の本質的な仮想性に思い至ったりした。 […]

    by 境界考・その3 ~ 境界と「間」 | Deep Breath €2025年3月29日 11:23 AM

down

コメントする




Toshi's Profile

会社員(製造業・雇用延長)。元SE、元大学非常勤講師、元ロルファー。DIYと散歩とメモが趣味。Moleskineを持ち歩いている。愛知県岡崎市在住。
toshi@ueba.sakura.ne.jp
DIY作品集はこちら