2024/04/14

ユーミンは、今年2023年はデビュー50周年で、5月から全国アリーナツアーをやっていて、12月の愛知・日本ガイシホールが最終公演だった。妻がチケット取れたよと言うので、ご相伴にあずかって師走の1日、ユーミンに会いに行ってきた。ユーミンのライブは、初めて見たけど、ド派手な演出と大音響で、火を噴く巨大なドラゴンに乗って歌っている姿は、御年69歳とは思えないパワフルさで、自分もおおいにエネルギーをもらった。
その日のセットリストにも入っていたが、ユーミンの人気曲に「春よ来い」という曲がある。名曲なので、聞いたことのない方はぜひ一度聞いてみてほしい。サビはこんな感じ。
” 春よ~遠き春よ 瞼閉じればそこに 愛をくれし君の なつかしき声がする~ “
遠き春とは、遠い昔のある日の春と言う意味か、あるいは、待っているけど、なかなか来ない春という意味か。今、このうららかな春の日、というのではなく、瞼を閉じて記憶の中にある春を何とか思い出そうとしている、どこか切なさが伝わってくる。曲調も、決して明るい曲ではなく、独特の物悲しい感じで、ググって調べたらイ短調とあった。でも、それが妙に「春」とマッチして、今更ながら、名曲だなぁとしみじみ思った。
切ない春と言えば、万葉集巻19巻末の、家持絶唱3首だろう。
“春の野に 霞たなびき うら悲し この夕影に うぐひす鳴くも”
家持が35歳ぐらいに詠んだとのこと。家持は、若くして妻を亡くし、一旦富山に転勤後、都に戻って来るが、藤原氏の台頭で大伴氏の居場所がなくなってきていることもあり、また、昔の妻の面影もあり、春の野でうぐいすが鳴いても、物悲しい気持ちがこの有名な歌を詠わしめた。
かのアイドルの元祖キャンディーズも、デビューはユーミンと同じ1972年。こちらは普通の女子になりたい!で、早々に引退したが、2023年の今年、TVで「キャンディーズ伝説のライブ」という特集番組をやるほどの伝説のアイドルだった。キャンディーズにも「春一番」と言う春のアンセムがある。でも、こちらは、もうすぐはぁ~るですねぇ、彼を誘ってみませんか、という爽やかな曲で、全然物悲しくはない。
ユーミン、キャンディーズと来たら、みゆきさんを出さないわけにはいかない。中島みゆきにも「春なのに」という名曲がある。柏原芳恵が歌ってヒットした。”春なのにお別れですか、春なのになみだ~がこぼれます” 春は別れの季節でもあるので、悲しいのも当然なのかもしれない。
春なのに、うら悲しい。ユーミンの春よ来いが、家持の絶唱と重なった。遠い春の日に愛をくれた人の眼差しを思い出す。家持の妻を思う気持ちと重なる解釈もできなくはない。ユーミン、古き日本の歌詠みの心を継承するもの。短調の春に、日本文化の奥深さを見たような気がした。
2023.12.31.日 大晦日、ぎりぎりで今年12本めをアップ
写真:松任谷由美 50周年記念ベストアルバム ユーミン万歳!