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記憶考・その1 〜 ハードディスクとドロイドの記憶

time 2021/04/18

 昔使っていた古いパソコンが、何台か小屋裏に置いたままになっていて、場所だけ取っているので、いつか処分しようと思っていたところ、先日、思い立って処分することにした。それが意外とたいへんだった。そもそもパソコンは不燃物としてゴミに出すことができないので、処分業者に引き取ってもらうのだが、自治体と提携している業者に申し込もうとしたら、引き取りは無料だが、ハードディスクのデータ消去は有料で、1台3,000円だと書いある。ハードディスクは7個あったので、合計2万1千円、記憶を消すだけで2万円はちょっと高い。ぼったくりだと思って、よく読むと、「ご自身で消去」という選択肢もある。ちょっと面倒くさいが、自分で消そうと思って、ハードディスクだけを取り外して(7台!)、かろうじて起動する1台のマザーボードにつなげて、パソコンに認識させて、中身を全て消す、という作業を繰り返した。

 最初は、Windowsのフォーマットという初期化の機能を使って消せたと思ったのだが、中にフォーマットできないものがあって、ググって調べているうちに、パソコンの処分時にハードディスクの中身を消すには、フォーマットではだめで、専用のデータ消去ソフトを使わなければならないことがわかった。フォーマットは、どこに何が書いてあるかの目次情報を消すだけで、実際のデータは消えてないのだという。それで結局、フリーソフトをいくつか試し、最終的に7台とも”wipe-out”というHDD完全消去用のソフトで中身を完全に消去できた。0とかランダムな値とかを何度か上書きするもので、結構な時間がかかった。夕食後の作業を延べ数日、2万1千円だと思うと、時給はあまりよくない作業だった。データ消去、なかなか手強かった。でも、データ消去を請け負う業者としてもやっていけそうなぐらいな技を身につけた。

 記憶を消すと言えば、スターウォーズのエピソード9で、C3POが共和国軍を救うため、シス語から翻訳された言葉を取り出すために、これまでの記憶を全て消去しなければならない場面を思い出す。いくら仲間を救うためとは言え、自分の過去の記憶を全て失わなければならないという条件は、相当過酷なものに思える。そこで3POは、健気にも自らその運命を受け入れるのだが、そのシーンでは、表情がないはずのドロイドの顔がとても切なく見えて、これ以上ないほどの自己犠牲に、3POの決断を一生忘れないと思った。

 ネタバレをすると、結局C3POの記憶はR2D2がバックアップを持っていて、その後、あっさりコピーされて元に戻るのだが。まぁ、これについては、ネット上には、あんなに3POに同情したのに損したみたいな様々な意見が上がっている。自分にとっては、データのバックアップは大事、という教訓の1つになったし、デジタルな記憶というものの「はかなさ」をしみじみと感じた。

 記憶と言っても、コンピュータの記憶装置に格納されている0と1の電荷の集まりと、人間の記憶とはかなり意味合いが違うようだ。消すのに料金がかかる古いパソコンのハードディスク、世界を救うためにこれまでの人生(ドロイド生?)の記憶を消し去る物語に感動する心。もし、人間の脳の記憶が、コンピュータの記憶装置のように、容易に消せない性質のものだったとしたら、人のありかたもかなり違ったものになっているのだろうなと思う。

2021.4.18(日)
写真:LINEのスターウォーズスタンプ

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Toshi's Profile

会社員(製造業・雇用延長)。元SE、元大学非常勤講師、元ロルファー。DIYと散歩とメモが趣味。Moleskineを持ち歩いている。愛知県岡崎市在住。
toshi@ueba.sakura.ne.jp
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