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科学考・その12 〜 宇宙は暗くない

time 2020/05/23

File source: http://commons.wikimedia.org/wiki/File:WMAP_image_of_the_CMB_anisotropy.jpg

 前回の科学考で、夜の暗さは宇宙が暗闇であることの証拠だと書いたが、C.ロヴェッリさんの「すごい物理学講義」を読んでいて、訂正しなければ、と思った。それは、宇宙背景放射と呼ばれる電波の存在である。ビッグバン直後の高温状態の名残が、3K(ケルビン)という低い温度の電磁波として全宇宙に満ちていて、私達の地球から見ても、どの方向にも観測される。

 もちろん波長1.9mm、周波数160GHzの電波は人間の目には見えないので、人の感覚としては夜の空は暗いけれど、宇宙にはこの3Kの電磁波が満ちているのだ。もちろん昼間の空にも。だから、安易に宇宙は暗闇が優勢で光は劣勢、などと言ってはいけなかった。量子力学によれば、電磁波は光子のことなのだから、むしろ、この宇宙は光に満ちていると言ったほうが正しい。

 こんな気付きがあるから、科学は楽しい。ちなみに、ロヴェッリさんの本は、量子重力についての本で、一般向けなのだが本格的に書かれていて、読んでいてとてもワクワクした。量子重力自体については、難しくてとても理解できないが、それでもニュアンスは伝わってくる。量子力学が、エネルギーにこれ以上分割できない最小の単位があることを示したのと同じように、時空間にも、それ以上分割できない最小の単位があると考える。ちなみに、相対性理論によると、時間と空間は分けることのできない一体のものなので、それを時空間と呼ぶ。

 これは、人間の日常的な感覚とはかけ離れた考え方で、とても、あー、そうなんですかと簡単には受け入れられない。空間も時間も、通常の感覚では、滑らかにつながっていてブツブツの細切れだと言われても実感はない。でも、量子力学と一般相対性理論を受け入れて、どちらにも矛盾のない考え方をしようとすると、時空間も量子化されていると考えるのが自然なのだと言われると、ちょっと納得する。

 宇宙が本当は電磁波に満ちていることも、時空間も実は量子の単位で不連続に数えられるものだと考えることも、人が認識できる日常的な感覚などたかが知れているということを教えてくれる。その意味で、科学を学ぶということは、自然の本当の姿を前にして、人が謙虚になれるとてもよい方法だと思う。

2020.5.23(土)
写真 宇宙背景放射 Wikipediaより

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Toshi's Profile

会社員(製造業・雇用延長)。元SE、元大学非常勤講師、元ロルファー。DIYと散歩とメモが趣味。Moleskineを持ち歩いている。愛知県岡崎市在住。
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